鏡の前で口を開けると左右に見える、扁桃腺(口蓋扁桃)。
風邪をひくと腫れて痛む……という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな扁桃腺と歌の関係についてご紹介します。
※医学的には「扁桃腺」ではなく「扁桃」が正しい呼び方のようですが、この記事では社会での馴染み深さを考慮し、「扁桃腺」と呼ばせていただきます。
扁桃腺を取ると歌が上手くなるって本当?
上のイラストで、喉奥の左右から顔を出す、つやつやとしたピンクの組織として描かれているのが扁桃腺です。
この扁桃腺を取ると歌が上手くなる、という話を聞いたことはありませんか?
2015年に、有名アイドルが扁桃腺の切除手術を行ったことで話題になったので、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、扁桃腺を取っても歌が上手くなるわけではありません。
音程の調整は声帯が、歌声の伸びと安定感・長く続く息などは肺と全身の筋肉などが、それぞれ重要な役割を果たしています。
扁桃腺はそのどれにも関わっておらず、言ってしまえばあってもなくても、理論上はあまり関係ないんです。
ただ、歌を歌う上で、口の中の空間の使い方も大切な要素のひとつ。
プロの歌手は喉や肺だけではなく、全身の総合的なメンテナンスをしながら自分の歌をプロデュースしています。
扁桃腺は、歌う上で決定的な器官ではないけれど全く関係ないわけでもない、とても微妙な存在なのです。
歌う上で起こる困りごとに扁桃腺のトラブルが関わっていることも多いので、取るとそのトラブルの原因がなくなり、のびのびと歌えるようになる人もいるようです。
扁桃腺を取るとどうなるかウワサの真相
過去に何人も手術をしている人がいるとはいえ、もともとあるものを取り除いてしまうと、その後の生活にどんな影響があるか気になってしまいますよね。
扁桃腺を取った後どうなるか、よく噂になる話題をまとめてみました。
当事者やその周りの人の、生の声もあわせてご紹介します。
扁桃腺を切除すると声が変わる?
声の性質を左右するのは主に声帯なので、理論上は扁桃腺を取っても取らなくてもあまり関係なさそうですが……
これについては「人による」としか言えないようです。
Twitterでも、「扁桃腺を取って声が変わった」「変わらない」と、両方の声が見られます。
そういえば、最近あんまキャスしなくなったのは、扁桃腺取る手術してから声が変わったからです…かたじけない。
— しゅん (@yuzu_r0) May 2, 2023
!!?!、?!?!?
— 闇猫°-yamineko- (@83___neko) May 11, 2023
待って心配すぎる…
ろにちゃん来たばっかりなのにね😭😭
昔身近に扁桃腺取る手術した人いたけど声は変わらなかったよ!!
いま取っちゃえば今後もう少し楽にはなると思うから頑張ってね待ってるからね;;
Twitterの声を見ていると、「変わった」と投稿しているのは取ったご本人、「変わらない」と投稿しているのは周囲の人が多い印象です。
もちろん、その逆を投稿している人もいて、本当に「人による」ようですね。
扁桃腺を切除すると高音がでない?
これも、たまに聞く噂ですね。
これについても、どうやら「人による」ようです。
Twitterでは、扁桃腺を取って地声が高くなったという人の声が見られます。
また歌声については、高音が出にくくなったという声がある一方、「扁桃腺を取ると高音が出るようになるらしい」という内容のつぶやきも見られます。
高音が出やすくなったというつぶやきは見られませんでした。
小さい頃に寝る時無呼吸だったりあまりに扁桃腺炎になりすぎると取るやで
— HARUTO MELT DOWN (@kyasuharu20) November 10, 2022
友達取って声高くなっておもろかった記憶あるわ
うーん...
— よわちん (@yowachinchin) May 28, 2022
扁桃腺取る前はもっと高音が出たのだが... pic.twitter.com/vYR3IXf8BL
つぶやかれているからといって絶対的な真実とは限りませんし、つぶやかれていないからといってその事実がないわけでもありません。
どうとも断言できない、なかなか繊細なお話ですね。
扁桃腺を大人になってから切除する理由
何もないのに扁桃腺を取る人はいないか、いてもごく少数でしょう。
大人になってから扁桃腺を取ることを決めた人には、各々理由があることが多いです。
扁桃腺炎で頻繁に高熱が出る
扁桃腺を取る理由として一番多いのは、扁桃腺炎ではないでしょうか。
Twitterでも、繰り返す扁桃腺炎を理由に扁桃腺を取ろうと決めた人、取ろうか悩んでいる人の声がたくさん見られます。
扁桃腺炎はウィルスや細菌に感染することで起こり、唾も飲み込めないほど強い喉の痛みと、38度を超えるような高熱が出る、とてもつらい病気です。
かかってしまうと喉の痛みで食事もろくに取れず、高熱で体力が奪われてしまうので、身体への負担も相当なもの。
ひどくなると、喉に膿がたまったり、その膿が身体の他の部分(主に首や胸のあたり)にまで広がって重症化してしまうこともあります。
1年のうちに何回もかかってしまったり、きっかけがあるたびにかかってしまったりする場合は、扁桃腺を取ってしまう方がいいこともあります。
食べ物を飲み込みにくい
扁桃腺の大きさは6~7歳でピークを迎え、そのあとはだんだんと小さくなっていくのですが、何かの理由で大人になっても扁桃腺が大きいままだったり、大きくなってしまったりする人もいます。
普段困らなければいいのですが、食べ物が飲み込みにくいほど大きい場合、生活に支障をきたしてしまうので手術で取ることもあります。
いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因になる
「食べ物を飲み込みにくい」の項目で触れたように、本来大人になるに従って小さくなっていくはずの扁桃腺が、何かの理由で大きいまま、または大きくなってしまう人もいます。
睡眠中、大きい扁桃腺が空気の通り道を塞ぎ、いびきの原因になったり、ひどい時には睡眠時無呼吸症候群……つまり呼吸ができなくなってしまったりすることもあります。
睡眠時無呼吸症候群は突然死の原因のひとつとも言われており、程度にもよりますが扁桃腺を取って空気の通り道を作った方がいい場合もあります。
カラオケなどで扁桃腺を痛めやすい
これを理由に挙げる人もいますが、医学的に見ると切除の理由にはならないようです。
カラオケで歌いすぎた時などに痛めるのは扁桃腺でなく声帯のため、これを理由に扁桃腺を切除したいと考えている人は、自分がきちんと納得できるまでお医者さんと相談した方がいいかもしれません。
扁桃腺を切除する費用
病院や自己負担割合にもよりますが、大体10万円前後になることが多いようです。
ただ、扁桃腺の切除手術は全身麻酔で行われるため、基本的には入院しての手術になります。
入っている保険によっては保険金がおりる対象になることも多いため、実際負担する額はもう少し抑えられる場合が多いのではないでしょうか。
扁桃腺を取るメリット
扁桃腺を取るメリットとして、主に以下の2点があります。
扁桃腺炎による高熱がでない
扁桃腺炎に苦しんでいる人にとって、これが一番のメリットですね。
扁桃腺を取ってしまえば扁桃腺炎にかからなくなるので、扁桃腺炎に伴う高熱や、激しい喉の痛みによる体力の消耗がなくなります。
睡眠の質が上がる
いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩んでいる人にとってのメリットです。
大きな扁桃腺で気道が塞がり、呼吸がしづらくなったり、止まってしまったりすると、睡眠の質が著しく低下します。
扁桃腺を切除して空気の通り道を作ると、睡眠時にもスムーズに呼吸ができるようになり、睡眠の質がアップします。
扁桃腺を取るデメリット
取らなければいけない理由があるから取ることが多いのですが、扁桃腺を取る場合、主に手術に伴うデメリットがあります。
入院しなければならない
扁桃腺を取る手術は全身麻酔で行うため、入院する必要があります。
手術にかかる時間は30分~1時間前後で、入院期間の目安はおよそ1週間。
手術した後の管理が大切なため、この入院期間が一般的なようです。
仕事や学業・家事などの都合をつけてお休みするにはやや長い期間のため、負担になると感じる人も多いようです。
術後の痛み
体の一部を手術で切り取るので、術後には多少なりとも痛みが出ます。
術後2~3日で落ち着くといわれることが多いようですが、食事をしたり、声を出したりするときの痛みも含めると10日前後続くこともあるようです。
個人差が大きいため、この日数はあくまで目安です。
扁桃腺を切除せず扁桃腺炎を防ぐポイント2つ!
扁桃腺炎は予防したい、できたらかかりたくないけれど、扁桃腺を取るのはちょっと気が引ける……という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方のために、扁桃腺を切除せず、扁桃腺炎を防ぐポイントをご紹介します!
規則正しい生活
扁桃腺炎は、細菌・ウイルスへの感染によって起こります。
不規則な生活や寝不足などが続くと、身体の抵抗力が弱まり、感染が起こりやすくなってしまいます。
仕事が不規則な方や育児中の方など、したくてもできない方も多いのですが、それでもできる限り規則正しい生活を心がけましょう。
これは扁桃腺炎以外の感染症や、身体の不調の予防にもなります。
こまめなうがい
感染症の予防の基本でもある、手洗い・うがいも非常に効果的です。
扁桃腺に細菌やウイルスがついても、増殖する前にこまめに洗い流してしまえば、扁桃腺炎まで進んでしまう可能性はぐんと低くなります。
いきなりガラガラうがいをするのではなく、1度目はブクブクうがいで口の中の汚れを洗い流し、2回目以降でガラガラするのが理想的です。
喉の奥に水が当たるよう、「あー」「うー」と声を出しながら15秒程度うがいをしましょう。
1度だけでなく複数回、しっかりうがいをするとより効果的です。
うがい薬を使うとさらによさそうに思えますが、殺菌効果のあるうがい薬は喉への刺激が強い場合があります。
普段は水道水でも十分効果があるので、うがい薬は必要に応じて、適度に使うのがよさそうですね。
扁桃腺を切除しなくても音痴は改善できる
音痴には大きく分けて2つの種類があります。
- 出せる声域が狭く、歌っていても正しい音に合わせることができない
- 間違った音程で聞き取って覚えてしまっていたり、自分の出している音を正しく認識できていなかったりする
前者は声帯、後者は耳の問題なので、音痴の原因を知り、正しい訓練や対処をすれば、扁桃腺を切除しなくても音痴は改善できます。
まとめ
扁桃腺の切除について、歌との関係やよく聞く噂、メリットやデメリットなどをご紹介させていただきました。
もしあなたが扁桃腺にまつわる悩み・辛さを抱えているのでしたら、この記事を参考に、まずはお医者さんにご相談してみてください。
扁桃腺を取るにしても、取らないにしても、一番大切なのはあなた自身の意思と判断です!
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